「年輪をチカラに」



「カルチベート」という言葉

「大事なのは、カルチベートされるということなんだ。カルチュアというのは、公式や単語をたくさん暗記している事でなくて、心を広く持つという事なんだ。つまり、愛するという事を知る事だ。(中略)学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。 けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。(中略)ゆったりと、真にカルチベートされた人間になれ!」(太宰治『正義と微笑』)
青臭い青春時代、太宰治の『正義と微笑』の中のこの言葉に心が震えました。以来、ずっと私を支えてくれ、今なお励まし続けてくれている言葉です。


「ことなひまめ事務所」という事務所

「ことなひまめ事務所」、このなんだか可笑しな名前は、事務所を立ち上げた時の私たち2人を象徴する造語でした。「ことな」――彼は、半分子供で半分だけ大人。「ひまめ」――彼女は、暇そうに見えるけど意外にまめな人。 あれから15年という月日が流れました。


「田舎暮らし」という暮らし

その前の15年は、2人別々の場所で別々の人生を生きていました。私は企業に就職をして、社会人としての自分を育ててもらいました。そして、独立してフリーランスのライターに。夫は、やはり会社勤めを経験した後、起業して社長になって、倒産も離婚も経験してという波乱の15年。 そんな2人が、縁あって秋田の地で田舎暮らしを始めました。そして立ち上げたのが「ことなひまめ事務所」でした。


「時代の変遷」という体験

振り返ると私の企業勤めは、終身雇用が当たり前、女性は会社の華でよしとされていた時代から、男女雇用均等法が施行され、能力給の人事制度が導入されと、まさに社会の構造そのものが変わっていく時代の変遷の体験でした。 「何も分かりませんが、よろしくお願いします」とあいさつをした入社初日。恐れを知らないこの新入社員は、本当に何も知らず社会の縮図の中に入り、驚き、戸惑い、抵抗しながらも、3年ぐらいたつと仕事にも企業という怪物にも慣れ、後輩もでき、上司にもいっぱしの口を利くようになり、そして5年もすると生意気になり、自分の実力をちゃんと評価してほしいと思うようになり……私はそんな感じでした。 10年が過ぎると、自分はこのままでいいんだろうか……そんな思いがくすぶり始め、それは姿を変え、会社への不満となって爆発寸前。 当時、フリーのアナウンサーになるといって退社し、本当にその夢を実現した同僚がいました。同じ頃、志と夢を抱いて独立した若き起業家に出会いました。彼らは皆、きらきらと目を輝かせて語ります。それに引き換え、今の私は自分にOKが出せるだろうか・・・。 そして、フリーランスのライターになるという一大決心をして退社。「そんなに甘いもんじゃないからやめたほうがいいよ」という、先輩ライターの谷底に突き落とす親獅子のごとき言葉に最初の洗礼を受けながらも、勢いよく船出したのです。 取材で苦労をし、原稿は何度も駄目出しされ、書けなくて徹夜をしたり・・・。それでも、取材で出会った人からいろいろなことを感じ、学ぶ日々でした。 そんな挑戦の時代も、自分を支えたのは“一粒の砂金論”です。


「ヨイショ」という掛け声

普通に暮らすということは、とてもスゴイことだ! 次第にそんなことを思うようになりました。田舎暮らしをして名もなき普通の人々を取材したいと、今度は住む場所を変えたのでした。 畑づくりに燃え、田舎のおじいちゃんやおばあちゃんたちにとてもかわいがっていただきました。そんな日々の記録を綴ったり地元の取材をしたりする一方で、インターネットを介しての仕事を始めたのでした。小屋に捨ててあった板に「ことなひまめ事務所」という文字を彫って小さな看板を作りました。 さて、そうして15年がたちました。結婚し、介護も経験し、親を見送りと、思い返せば本当にいろいろなことがありました。気が付くと、次の行動に移る時に「ヨイショ」という掛け声が出るようになり、若いってすごいなあと思うようになりました。


「変わらない」という信念

働き方改革が叫ばれる時代、「テレワーク」という言葉も聞かれるようになりました。それはもう15年前から私たちが実践してきたことです。会社に通勤することなく、いつでも、どこでも、どこからの仕事でも受けることがきます。 どんな働き方がしたいのか、散々模索して悩んでたどりついた今の「ことなひまめ事務所」というカタチ。 フリーランスですから、全く身分の保証がありません。給料ももらえません。管理もされない代わりに、管理してくれる人もいません。全ての責任は自分。働かざる者食うべからずの厳しい世界です。 それでもあえてこのカタチを選んだのは、組織に所属せず、依存せず、自分の能力で勝負したい、自分の思いが伝わる仕事をしたい、自分がわくわくする仕事をしたい、そんな思いと、何よりも大切なのは時間だと思ったからです。時間を自由に設計する、それが可能なカタチだったからです。 2人で過ごす時間、自分の時間、他の誰かのために使う時間、学んだり、楽しんだり、外の世界を知ったりするための時間。そんな豊かな時間が大切だと思ったからです。 そしてもう一つの思いが、小さな事務所だからこそ、1対1のお付き合いを大切にしたお仕事がしたいということです。これも私たちが大きな会社を経験してきてたどり着いた私たちらしさです。 このカタチであれば、ずーっとずーっと仕事をして生きていきたいなと思いますし、それが可能だとも思っています。


「経験」という財産

100歳時代、まさかそんな世の中になるとは思っていませんでした。 「年を取る」ことにはマイナスイメージがあります。「ベテラン」といわれる頂点の時期、そこを過ぎると、なんだかもう劣化するだけのような、高齢化対策――対策を講じなければならない人のくくりで語られるようになります。 でも、私たちは、それには異論があります。若い時には絶対になかったものが、経験という生きる訓練の底に一つかみの砂金、いえいえ、二つかみも三つかみものたくさんの砂金となって残っていると実感するからです。 経験という財産は、一足飛びには蓄えられません。そして、決して劣化するものではないと信じています。それを発揮して仕事に生かして届けられるのは、ちゃんとカルチベートされた人が持つ年輪のチカラだと思うからです。


「誠実であること、しなやかであること」という約束

人はそれぞれ歩む人生は違いますが、誰もが皆それぞれに重ねた年の分だけの経験を身に付けています。私たちも、身に付けた経験の分だけ、豊かになったと思っています。そして、豊かになった分だけ、良い仕事ができると思っています。 私たちの得意分野を生かして、その分野のプロとして、その人が何を伝えたいのか、何を書きたいのか、何を表現したいのかを、きちんと聞いて、読んで、察して、それを文章にするのが私たちの仕事です。 15年ずっと変わらない私たちのモットー、それは「誠実であること、しなやかであること」。一つ一つの仕事に、そして、一人一人に、「誠実であること、しなやかであること」。 これからも大切な皆さんとの約束、そして、自分たちとの約束です。


伊藤 真理 2019.11.11



あゆみ



2004.06 田舎暮らしを始める

2004.11 ことなひまめ事務所開設

2009.01 オフィスマドロスWEB開設

2011.03 東日本大震災

2014.11 ことなひまめ事務所10周年

2015.05 事務所移転

2019.01 オフィスマドロス10周年

2019.03 起こし屋本舗WEB開設

2019.10 事務所移転(現在)

2019.11 ことなひまめ事務所15周年

2020.03 新型コロナウイルス

about us

carrier & skill & mission

小さな事務所だからこそできることがあります。

伊藤 真理

Mari Ito

OLを経てライターとして独立。
FMラジオ番組のエッセイ原稿執筆。
新聞社の特集記事や料理記事・経済誌の経済記事の原稿執筆。
社内報のニュース・コラム・エッセイ等執筆多数。
文字起こし歴20年。(2019年現在)
(1)「スピード納期」「原稿精度」はもちろん「校正・要約」まで一貫して行えること。
強み(2)あらゆる個人的事情に配慮した、きめ細かいサービスが提供できること。
強み(3)完全内制作業により、データ等の漏洩防止が最大限に図られること。
『納期等、約束したことは死んでも守ります!』が職業人としての当然の信条。
毎日新聞社主催の論文コンクール『農業記録賞』にて「優秀賞」受賞をはじめ受賞歴多数。
2020年 現役の放送大学生!

伊藤 靖

Yasushi Ito

1995年 アパレル企業等を経てITベンチャー企業を起業。
『第5回小学館文庫小説賞』にて小説『ひまめ』が優秀賞受賞。
『創作童話絵本コンテスト』にて童話『ぼく、空き缶』入選など執筆・出版多数。
『21世紀の教育』にて論文『スロー教育のすすめ』が湯川れい子氏より評価される。
宮本輝選によるエッセイ集『父の目方』を光文社より共同出版。
言葉に関する面白ブログ『言葉のチカラ』など、ブログ・記事・小説・エッセイ等の執筆や代筆多数。
デザイン分野では、企業のCIデザイン制作等、ブランディング戦略に実績あり。
オペラ歌手のホームページ等制作実績多数。
2014年 バツベン発足!
2016年 念願のサックスプレーヤーデビュー!
2020年 念願の朗読家デビュー!!

モットー
「誠実にしなやかに」

ことなひまめ事務所のホームページへようこそ!!  

夫婦2人で始めた小さな事務所です。事務所といっても何しろ2人しかいませんから、晩酌タイムがミーティングの場であり、発想の場であり、明日への活力を生み出す場です。とにかくよくしゃべります。  

40代後半に差し掛かった私たち。20代、30代は会社勤めもやりました。起業もしてみました。5年前、田舎暮らしにあこがれて移り住み、畑を耕したりまきを割ったり屋根の雪下ろしをしたりと、村の人の力を借りて力仕事もやりました。介護も経験しました。社会の中で様々な経験をしながらここまで育てていただいたのです。  

そして今、実感しています。お年寄りの知恵とパワーもすごい。子どもの純粋なエネルギーもすごい。若者の可能性に満ちたバイタリティーもすごい。そして・・・40代、50代の実体験に根ざした底力もやっぱりすごいのではないかということを。  

私たちが大切にしているのは、「誠実であること」。そして、「しなやかであること」。縁あって出会う人たちと、お互いに気持ちの良いお付き合いができることを願っています。
「ホームページ開設のごあいさつ」(伊藤真理)2009.01.28

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